私は翻訳者になりたての頃、翻訳だけでなくチェッカーの仕事も請け負っていました。
たくさんの翻訳者さんの訳文を見ていると、コメントの付け方にも上手い下手があることに気付きます。
この記事では、上手なコメントの書き方のポイントをまとめました。
ダメな翻訳コメントの例
たとえば、
(原文)Cytotoxicity is the quality of being toxic to cells.
(訳文)細胞障害性とは、細胞に対する毒性のことです。
と訳したとします。
このとき、Cytotoxicity の訳語選択に迷ったとしたら、どのようなコメントを付けるのが正解でしょうか?
まず、ダメな翻訳コメントの例をお見せします。
えーと。何を確認すれば良いのかな?
チェッカーとしては一番困るパターンです。
このダメダメコメントを修正しながら良いコメントにしていきたいと思います。
翻訳コメントを上手に書くコツ
原文の引用範囲を適切にする
コメントの選択範囲は適切な位置にしましょう。
チェッカーが確認すべき場所が明確になります。
何が分からないのかを伝える
ここまで書いてあれば、翻訳者が何を迷っているのかチェッカーに伝わります。
訳語選択の根拠(考えたこと・調べたこと)を伝える
きちんと調べた上でそれでも判断に迷う部分である事が伝わります。
これなら、翻訳会社のチェッカーはある程度の前提知識を入れた状態で調べられますし、このままクライアントに納品してもOKでしょう。
後工程の人の労力がぐんと減ります。
売れっ子翻訳者になるためにコメントが重要な理由
さて、ここでダメなコメントと良いコメントを改めて見比べてみてください。
- ダメなコメント
- 良いコメント
あなたが翻訳会社のスタッフなら、どちらの翻訳者と一緒に働きたいですか?
良いコメントを付けてくれる翻訳者と働きたいのではないでしょうか。
上手にコメントできると、翻訳者には以下のようなメリットがあります。
依頼が増える
翻訳者が付けるコメントの良し悪しで、翻訳会社のチェッカー・コーディネーターさんの負担は大きく変わります。
翻訳の品質に大きな差がなければ「翻訳会社の人が楽になるように」と考えてくれる翻訳者と一緒に働きたいと思うのが人情です。
翻訳会社の人に「一緒に働きたい!」と思ってもらえれば、仕事は自然と増えていきます。
丁寧さ・調査力をアピールできる
調べたことをすべてコメントする必要はありませんが、チェッカーが不安を感じる恐れのある訳語にはコメントを付けましょう。
せっかく調べ物をしても、コメントしていなかったり、書き方が下手だったりすると伝わりません。
上手にコメントを付けて、やったことはきちんとアピールしましょう。
(もちろんアピールのために不要なコメントを付けるのはダメですよ!)
まとめ
自分の仕事をきちんとアピールしつつ、翻訳会社の人が楽になるようにコメントを書きましょう。